※ザスパクサツ群馬ファンによる、ザスパクサツ群馬贔屓のマッチレビューです。
第9節の岡山戦より7試合勝利から遠ざかるという苦しい状況を、前節の宿敵水戸ホーリーホック戦で変えることに成功。
その流れのまま天皇杯2回戦、これまた水戸相手に3-0で快勝しやっと流れがきたかと思われる状況でした。
昇格候補である京都サンガF.C.ですが、この良い流れのままにアウェーではありますが勝点1を目指して…あわよくば勝点3を取れればといった状況。
そんな第18節、京都サンガF.C.戦をレビューします。
Contents
スタメン・フォーメーション
京都サンガF.C.
スターティングメンバー
ポジション | 背番号 | 選手名 |
GK | 34 | 若原智也 |
DF | 2 | 飯田貴敬 |
17 | 荻原拓也 | |
19 | 麻田将吾 | |
23 | ヨルディ バイス | |
MF | 4 | 松田天馬 |
7 | 武富孝介 | |
16 | 武田将平 | |
24 | 川﨑颯太 | |
29 | 中野克哉 | |
FW | 9 | ピーター ウタカ |
ベンチ
ポジション | 背番号 | 選手名 |
GK | 21 | 清水圭介 |
DF | 41 | 白井康介 |
MF | 14 | 中川寛斗 |
31 | 福岡慎平 | |
32 | 上月壮一郎 | |
33 | 三沢直人 | |
FW | 20 | 李忠成 |
ピーター・ウタカがこの試合から復帰。
できれば出ないでもらいたかったと思うほどに、このFWは規格外。
またヨルディ・バイスも高いフィード力を持った素晴らしいCBだと思う。
ザスパクサツ群馬
スターティングメンバー
ポジション | 背番号 | 選手名 |
GK | 21 | 松原修平 |
DF | 3 | 畑尾大翔 |
15 | 金城ジャスティン俊樹 | |
16 | 久保田和音 | |
32 | 渡辺広大 | |
MF | 6 | 内田達也 |
7 | 加藤潤也 | |
11 | 田中稔也 | |
41 | 中山雄登 | |
FW | 9 | 北側柊斗 |
50 | 大前元紀 |
ベンチ
ポジション | 背番号 | 選手名 |
GK | 1 | 清水慶記 |
DF | 22 | 高橋勇利也 |
36 | 吉永昇偉 | |
MF | 19 | 白石智之 |
27 | 奥村晃司 | |
FW | 18 | 進昂平 |
39 | 高木彰人 |
今シーズン見てきて思うのはボランチのチョイスが謎ということ。
内田達也はポジショニングセンスの良さと、時折見せる攻撃参加が光るが…今シーズンの起用を見ると右SMFの方が活きているように思う。
またCBも次第点でこなしていたので、怪我人続出中のCBに回しても良いのではないかと。
中山雄登はヌメヌメとした独特のボールタッチで狭いところをすり抜ける能力は素晴らしいし、サイズからは考えられない強度の強い守備も見せている。
しかし彼もトップ下かSMFが本職なんじゃないかと思われ、この2枚をセントラルに配置すると決定的な縦パスが出ないという致命的な弱点を抱えるように思っている。
それを補うための岩上祐三や久保田和音、ジャスティンといった選手のサイドバック起用とは思うものの…素直にこれらの選手をボランチに使うのではダメなのだろうか?
また経験不足は否めないものの、抜群の縦パスにセンスを感じる奥村晃司もいるわけで…。
試合経過
CBとボランチの間のスペースを上手く使われ早々に失点
前半は群馬のキックオフでスタート。
開始早々の6分、中野克哉に裏を取られ決定的なピンチもこれはハンドに救われる。
7分にはロングボールをピーター・ウタカが頭で合わせるも松原修平がセーブ。
クロスを上げた荻原拓也に対する田中稔也のプレスも甘かったが、位置を考えれば確かにそれほど強いプレスをかけるところでもないかもしれない。
むしろ褒めるべきはピーター・ウタカの動きであり、畑尾大翔がボールを見た際に裏に抜けるというFWとしてセオリー通りの動き。
ピンポイントで合ったクロスと良いヘディングだったが、コースが甘くて助かったと言ったところか。
11分にはヨルディ・バイスからのロングフィードを中野克哉が頭で落とし、ピーター・ウタカが直接叩き込んで早くも失点。
3人とも素晴らしいプレーだったが…やはりワンバウンドの難しいボールを綺麗に叩いたウタカのシュート精度を褒めるべきだろうか。
あまりにも簡単に失点してしまった印象だが、このシーンは後で改めて振り返りたいと思う。
試合を通してそうだったが、最前線のピーター・ウタカは降りてくることが多く、両WGの中野克哉と武富孝介、更には2シャドーの武田将平と松田天馬の4人が高い位置でプレー。
これにより数的不利かつマークのズレが生じて、センターバックとボランチの間のスペースを上手く使われていたように感じた。
14分には加藤潤也の縦パスに中山雄登が抜け出すという良い動きがあったものの、合わずにチャンスとはならず。
その直後に京都サンガF.C.は、武富孝介が足を傷めて早々に中川寛斗との交代を余儀なくされる。
京都のプレスにハマりパスミスが目立つ群馬
20分を過ぎたあたりから少しずつザスパクサツ群馬にもリズムが出てくるも、ジャスティンのクロスが合わないシーンが続く。
今シーズン通してサイドからのクロスは多いものの、効果的なクロスが上がっていないのが得点数の少なさに繋がっていると思うのだが…。
京都サンガのプレスが速いためか、この試合はパスミスが目立つのも気になるところ。
特に田中稔也と内田達也のパスミスが酷く、ショートカウンターから危険なシーンも…。
松原修平の正面にシュートが行くことが多く助かっているが、下手をすると0-3や0-4なんて展開になりそうな不安も。
もちろんGKの正面にシュートが行くというのはGKのポジショニングが良いからであり、DFが最後まで体をしっかりと寄せているから…ということではある。
38分に久保田和音が自陣からドリブル突破でゴール前まで運び、ラストパスを送るも田中稔也はオフサイド…。
奥に北川柊斗もおり、北川はオンサイドだったと思われるので田中稔也が関与しなければ…面白い展開になっていたかもしれない。
このシーンを簡単に図解するとこんな感じ。
3枚目の図のように久保田が中に入ってきたために、田中は外を選んだと思うのだが…北川と重なる形に。
結果論ではあるが、2枚目の段階で左サイドに流れるフリから中に切れ込むべきだったのではないだろうか?
大前のパネンカ!終了間際のPKで同点に
アディショナルタイムは3分。
このままリードされたままハーフタイムかと思われたが、内田達也のロングフィードを麻田拓也が頭でGKに戻そうとするも短くなってしまう。
北川柊斗がかっさらい逆サイドの大前元紀へループでパスを出すも、少し時間がかかりディフェンスが帰陣。
大前は北川に折り返し、ペナルティエリア内中央で受けた北川がシュートに行くも戻った松田天馬のタックルがファールに。
ミスからのシーンで焦りがあったと思うが、ゴールライン上に1枚DFがおりGKも戻れた状態。
更には飯田貴敬と荻原拓也もシュートコースに入れるかどうか…といったところだったために、ザスパクサツ群馬としてはラッキーなPK獲得となる。
このPKを大前元紀が冷静に、ゴール中央にチップキックで蹴りこみ同点に。
前の試合、天皇杯にて今季初ゴールを上げてついに大前もフィーリングが戻ってきただろうか?
今シーズンは前でボールを受けられていないということもあるが、シュートもゴールに嫌われている印象が…。
待望のリーグ初得点となっただけに、これからかつての得点王を獲得した姿が戻ってくると良いのだが。
そして前半はこのまま終了となる。
ウタカが止められない!守備陣の粘りも虚しく失点
ハーフタイムで京都サンガF.C.は早くも2枚目のカードを切る。
中野克哉に代えて福岡慎平を投入、試合を観る感じだと福岡はシャドーに入り、シャドーの松田天馬が前に上がったように見える。
48分にはピーター・ウタカがペナルティエリアに侵入し、迷いに迷った結果中の福岡慎平を選択。
福岡のシュートは松原修平の正面に収まる。
今日は本当にシュートが松原の正面に飛んできて助かっているが…もちろん松原のポジショニングが正しいからでもある。
59分にはスローインをトラップしそこなった久保田和音から、福岡慎平がボールを奪いゴール前のピーター・ウタカへ。
2CBの間で受けたウタカはドリブルでペナルティエリア内まで侵入し、左足を振りぬくも枠の外に。
ザスパクサツ群馬としては決定機を外してくれて助かった形になったわけだが、この時の渡辺広大の対応が興味深かったので後ほど考察してみる。
そして京都サンガF.C.は3枚目のカードを切り、前半15分のアクシデントで投入した中川寛斗に代えて三沢直人を投入。
対するザスパクサツ群馬はいつも通り…どうにも交代の動きが遅い。
63分には川﨑颯太の楔の縦パスを受けた松田天馬が中のピーター・ウタカへ折り返す。
このボールを大前元紀が足を伸ばしてカットするも…それが畑尾大翔と渡辺広大の間に入り2人が処理しにいったところでボールはPKスポットに向かってこぼれる形に…。
松原修平が飛び出すも、ウタカの出だしが良く松原を交わしてゴールに流し込む。
これは失点シーンとしては仕方がない部分もあるかと思う。
大前がカットしたボールが不運にも両センターバックの間にこぼれ、畑尾と広大が重なってしまったのは珍しいとも言える。
そしてウタカの反射神経と身体能力を褒めるべきだろう。
見るべきはそこではなく川﨑からの縦パスであり、ザスパとしてはボランチからこういったパスが出ないのが致命的になっている。
見事な連携で崩すもバーに嫌われる
66分にもザスパクサツ群馬はミスからボールをピーター・ウタカに奪われ、ゴールキーパーも交わされるピンチを迎えるもディフェンスが体を張って守り抜く。
68分にザスパクサツ群馬は3枚代えを行い、久保田和音に代わり高橋勇利也を。
北川柊斗に代えて高木彰人、ジャスティン俊樹に代えて吉永昇偉を投入。
高橋はまだ出場時間が短く評価には早いが…安定した守備を見せており、左利きの左サイドバックということで期待値が高い。
天皇杯のハイライトを見る限りでは攻撃面でもかなり良い物を持っているように見える。
天皇杯と言えば値千金の先制ゴールを上げた進昂平は…なぜか使わず高木をチョイス。
北川を下げることで高さがなくなる点を考えたのかとも思うのだが、高木かて175cmであり進は172cmと大差ない。
ちなみに北川は180cmである。
そして69分には高木彰人、加藤潤也、高橋勇利也で左サイドを綺麗に崩し、高橋のファーへのクロスを吉永昇偉が折り返す。
高木がスルーで空けたスペースに待っていたのは大前!だったのだが、シュートは不運にもクロスバーを叩く。
残念ながら得点とはならなかったものの、これは素晴らしい崩しだった。
何と言っても3人が絡んで左サイドを完璧に崩したのが大きい。
そして高橋のオーバーラップからの、深い位置からのクロスは左利きの左サイドバックならでは。
クロスを頭で折り返したのが右サイドバックの吉永というのも、攻撃に人数がかけられている証拠と言えるだろう。
声があったのかとっさの判断かは不明だが…高木のスルーによりシュートコースが綺麗に空いたのも見事。
大前のキックの精度なら決めておかねばならないシーンではあるが、大前だからこそキーパーが取れないあの位置に蹴れたのかもしれない。
俺達を熱くする男 広大!見事なヘディングで同点に
75分に加藤潤也に代えて白石智之を投入。
白石ももっと評価されても良い活躍を見せているのだが…今一つ出番に恵まれない。
直後の76分、コーナーキックから渡辺広大の見事なヘディングが炸裂!
畑尾と広大のスクリーンプレーにより、麻田将吾と武田将平がどちらも畑尾をマークすることになり広大がフリーに。
麻田としてはこの時に接触もあり倒れてしまったことも、広大がフリーになった要因の1つではあろう。
ボールの落下点にはヨルディ・バイスもいたのだが、後ろからGKの声があったか競らずにむしろ身をかがめるような仕草も。
広大が若原智哉に競り勝ち…競らなかったバイスは頭を抱えるという結果に。
大前元紀のボールが良かったこともあるが、若原としては落下点を少し読み違えたか?
広大の方が先に落下点に入ったこともあり、キーパーの手よりも高い頭で見事にゴールに流し込んだ。
82分には良い崩しから大前の技ありアウトサイドシュートがあったが、枠をわずかに外れることに。
先ほどのクロスバー直撃と言い、今シーズンの大前はキックのフィーリングにズレがあるように見える。
数試合前は明らかに動きに精彩を欠いていたこともあり、連戦による疲労があるのかもしれない。
同82分には最後のカードを切り、内田達也に代えて奥村晃司を投入。
この交代の意図が今一つわからないのは…自分のサッカーを観る目が足りないからなのだろうか?
ボランチを代えるならば明らかに試合から消えていた中山雄登を下げる方が良かったのではないかと。
田中稔也も完全に足が止まっていたので、進を右サイドに入れても良かったが…「同点で良し」というメッセージでFWを入れなかったのであれば、奥村を入れて内田を右に持っていっても良かった。
83分には田中稔也のミスから、自らファールで止め良い位置でのFKを献上。
稔也は完全に足が止まっているが…あれだけ毎試合ボールを追えば足も止まるというもの。
固定メンバーの弊害が出ているようにも思うし、これからの夏場が心配でもある。
このFKの前に京都も最後の交代を行い、武田将平に代わり李忠成を、萩原拓也に代わり白井康介を投入。
FKはヨルディ・バイスが蹴り、良いキックではあったがコースが甘くGKの正面に。
アディナルタイムの91分にはカウンターから大前元紀がファールをもらい、良い位置でのFKを獲得。
もらいに行ったようにも見え、さすがは大前といったところか。
自らFKを蹴るも枠を大きく外し、試合はこのまま2-2のドローとなる。
ピックアップポイント
1失点目なぜウタカはフリーだったのか?
まずはヨルディ・バイスがロングフィードを蹴る瞬間のポジショニングがこちら。
ジャスティンと渡辺広大の間に入ってきた武田将平だが、恐らく広大は見えていなかったと思われる。
キックの直前にピーター・ウタカに付いており、ウタカが降りていったところでマークを離しているので背中側から来た武田は見えていなかっただろう。
そしてこの武田を見ていたのはジャスティンなのだが、バイスのキックの際に体を外に向け直している。
つまりバイスのキックの瞬間に、大外の中野克哉を狙ったものと判断して行動を開始している。
しかしボールは中野ではなく、武田にきたためにジャスティンは武田に付けず、広大は武田に気付いた時には落下点に入れない状態に。
これがまず失点の原因1である。
そして武田が落とした瞬間のポジショニングがこちら。
広大がロングボールで押し込まれてしまったわけであるから、このスペースを埋めるのは誰か?
両ボランチの戻りが遅いとも言えるし、畑尾大翔がカバーするべきとも言える。
しかし畑尾としては武富孝介の存在も見なくてはならないので、そもそも枚数が足りていない。(5対4である)
これが失点の原因2である。
結果論としては内田か中山が戻るべきだったのではないだろうか?
このシーン以前からバイタルエリアでCBとボランチの間のスペースを使われていた印象があった。
京都は2シャドーもかなり高い位置を取っており、FWの3枚を含めて5枚というシーンが多く見られていた。
対する群馬は4バックなのでもちろん4枚。
数的不利となるために、DFとMFのライン間の選手を誰が見るのか…というのをハッキリとさせる必要があっただろう。
渡辺広大の体の向きは正しかったのか?
問題のシーンは59分。
スローインを受けそこなったところをさらわれ、ウタカに良い位置でボールが渡る。
この時の渡辺広大の体の向きはセオリー通り。
このシーンでは単独突破からのシュートしか選択肢がないので、一直線にゴールに向かわれるのを防ぐのが定石。
そして中に入られるとシュートの角度が広がるので、縦に追いやって角度を消すのがセオリーであろう。
ウタカは左足でトラップし、右足で前に運び、次の右足で中に切り込んでいく。
その時の位置関係がこちら。
セオリー的には中に切り込まれた時に、ウタカはほぼゴール正面になるので広大はほぼ正対となる。
もちろん両足を揃えると次の反応が遅れる…などの理由で完全に正対ではないがほぼ体は正面に向き、むしろどちらかと言ったら左足前の図とは逆のスタンスとなるのではないだろうか?
事実ウタカの左足のシュートに対して広大が出したブロックは逆足、つまり後ろ脚となった左足であり効果的なブロックとは言えない。
ではなぜ広大はこういった対応をしたのか?
これは広大のミスだったのか?
もちろん真相は本人に聞かないとわからないが、これは戦略だったと考える。
ウタカの怖いのは圧倒的に右足であり、左足の精度は右に比べると劣る。
広大はウタカがこのあと右に持ち変える、と予想してスタンスを変えなかったのではないだろうか?
結果的には畑尾の戻りが間に合いウタカは右に切り返せなくなるのだが…畑尾がいなくても切り替えしたら広大のブロックに合っていただろう。
結果、左足で撃たざるを得なくなり枠を外す…ということで広大の作戦勝ちである。
ウタカの驚異の右足を警戒し、左足は潔く捨てたことで失点を防いだ…と見るのは間違っているだろうか?
MOM
マン・オブ・ザ・マッチは大前元紀…と言いたいところだが、最後のFK含めて3本あった決定機の1つは沈めてほしかった。
もちろん1ゴール1アシストと全ての得点に絡み、攻撃面でも中心となる活躍を見せ、ここ数試合の不調を払拭したかのような活躍でありMOMに選出しても文句を言う人間はいないだろう。
しかし自分としてはこの試合は渡辺広大を推したい。
1ゴールはもちろん、守備でも畑尾と共に粘り強く守った。
2失点はしたものの、もっと取られてもおかしくなかった試合であり、かなり良く守ったと言って良いのではないだろうか?
MOMというよりはMIPなのかもしれないが、渡辺広大をMOMとしたい。
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