※ザスパ群馬ファンによる、ザスパ群馬贔屓のマッチレビューです。
第7節はアウェーでの徳島ヴォルティス戦。
1週間空いて再びこの試合から連戦となるため、3連戦の初戦ということになります。
ここまで6試合を終えていまだに勝利のない群馬ですが、今回の相手は同じく下位に苦しんでいる同期の徳島。
群馬とは違い既に1勝していますが、残りは1分4敗と…同レベルで苦しんでいる状態と言って良いでしょう。
ある意味ではここを勝ったチームが浮上のきっかけを掴むかもしれないという、シーズンのターニングポイントの1つとなる大事な試合になるかもしれません。
今回はそんな徳島ヴォルティス戦をレビューします。
Contents
スタメン・フォーメーション
徳島ヴォルティス
スターティングメンバー
ポジション | 背番号 | 選手名 |
GK | 1 | ホセ アウレリオ スアレス |
DF | 3 | 石尾崚雅 |
5 | 森昂大 | |
18 | エウシーニョ | |
42 | 橋本健人 | |
MF | 10 | 杉本太郎 |
20 | 児玉駿斗 | |
54 | 永木亮太 | |
FW | 8 | 柿谷曜一朗 |
30 | 坪井清志郎 | |
33 | 中野桂太 |
ベンチ
ポジション | 背番号 | 選手名 |
GK | 21 | 田中颯 |
DF | 4 | カイケ |
13 | 西野太陽 | |
MF | 27 | 島川俊郎 |
FW | 7 | チアゴ アウベス |
9 | ブラウン ノア 堅信 | |
17 | 高田颯也 |
徳島は前節からスタメンは変わらず。
ベンチを見ると渡大生に代わり、加入したばかりのチアゴ アウベスが入る以外に変更は無いようである。
注目はもちろん、今名前を挙げたチアゴ アウベス。
加入した直後ではあるものの、2023年シーズン末まで岡山でプレー。
退団後はブラジルのシャペコエンセでプレーしており、コンディション面でもJリーグへの慣れという面でも問題無いだろう。
いきなりのスタメン起用は無かったものの、必ずどこかで出てくると思われる。
スタメン組ではまずは守護神のホセ アウレリオ スアレスと、サイドバックのエウシーニョ。
更には群馬サポとしては嫌な思い出ばかりが蘇るであろう柿谷曜一朗と言った辺りが注目か。
他にも完全移籍となった永木亮太に中盤を支配されないようにしたいところ。
ザスパ群馬
スターティングメンバー
ポジション | 背番号 | 選手名 |
GK | 42 | 石井僚 |
DF | 2 | 城和隼颯 |
3 | 大畑隆也 | |
29 | 田頭亮太 | |
36 | 中塩大貴 | |
MF | 5 | 川上エドオジョン智慧 |
6 | 天笠泰輝 | |
10 | 佐藤亮 | |
15 | 風間宏希 | |
FW | 8 | 髙澤優也 |
23 | 平松宗 |
ベンチ
ポジション | 背番号 | 選手名 |
GK | 13 | 近藤壱成 |
MF | 22 | 高橋勇利也 |
FW | 7 | 和田昌士 |
9 | 北川柊斗 | |
17 | 山中惇希 | |
40 | 佐川洸介 | |
41 | 永長鷹虎 |
群馬も前節からメンバーの変更は無し。
しかしメンバー登録のポジションに変更があり、今回はDF登録が4枚ということに。
前節は大畑隆也と田頭亮太がMF登録となっており、この辺りは4バックか3バックか…というのを試合前に絞らせない狙いか?
ベンチを見ると玉城大志に代わり、怪我から復帰で今シーズン初のメンバー入りとなる高橋勇利也が入ることに。
酒井崇一が離脱中(コンディション不良ということだが…)の現状では、CBでもプレー可能な高橋がベンチに入るのは理想ではあるが…個人的には玉城がベンチ外となってしまったのが…。
個人的には不調気味の天笠泰輝を休ませて、玉城をスタメンで起用しても良いのではないかと評価していたが…。
スタメン変わらずということで櫛引政敏も再びベンチ外。
こちらは全く情報が無いようだが…前節の試合ではピッチアップの際に見送りでいたため怪我の可能性が高いだろうか。
公開されたトレーニング動画には姿が確認できなかったため、別メニューとなっているのだろう。
石井僚は再びチャンスということで、ここで抜群の活躍をして監督を良い意味で悩ませたいところ。
試合経過
【0~15分】3バック再び
前半は群馬のキックオフでスタート。
群馬は前節と同様に3バックのように見える。
これで3試合続けて3バックとなるため、さすがに以前の可変システムは止めた…と考えて良いだろう。
2分、川上エドオジョン智慧が良い仕掛けからクロスを送るも、これはクリアされてスローインに。
このプレー自体は大きなチャンスになったとは言えないものの、開始早々にこういった仕掛けが見られたのは良いことである。
また古巣に対してエドの気合も十分といったところだろうか。
4分、中塩大貴から髙澤優也へのパスがズレたところを永木亮太に潰されてロスト。
回収した杉本太郎は仕掛けられず一度後方に下げる選択をし橋本健人へ。
橋本から横の児玉駿斗にパスを送ると、裏に抜け出した坪井清志郎に良いパスが送られるも…わずかに届かず。
素晴らしいパスだったが…ここに全くプレッシャーがかかっていないのが今シーズン気になるところ。
また大畑隆也が完全に裏を取られたシーンは前節も見たような…?
5分、再び徳島がチャンスを迎え、柿谷曜一朗が永木亮太からパスを引き出すと右サイドの中野桂太へ。
その外をオーバーラップするエウシーニョを使うと、川上エドオジョン智慧が対応したこともあり戻りながら児玉駿斗へ。
そして髙澤優也とエドの間をすり抜けワンツーを引き出すと、ファーサイドにクロスを送り込む。
これを坪井清志郎が頭で合わせるも、枠の外に外れてくれて助かる形に。
エウシーニョに付いていくべきは…エドか?
エウシーニョが中に入ってくることを予想していなかったように見えたが…素晴らしいワンツーから完璧に崩されており失点しなかったのは運が良かっただけと言えるだろう。
(プレーが切れた際にエドに全く悪びれた様子が無かったため、チームの約束事としてここに入ってきた選手に対応するのはエドでは無いのか?)
この後は徐々に群馬もペースを掴んだか、セットプレーも含めていくつかチャンスを作るも決定機と言えるほどのものは作り出せず。
しかしここ3試合、可変システムを止めたと共に前半の戦い方も変えた印象があり、序盤に攻撃シーンが見られるようになったと言えるだろう。
【15~30分】お互いに手堅い展開に
19分、佐藤亮とのワンツーで田頭亮太がスペースに抜け出す。
ここからクロスを送ると髙澤優也がワントラップでDFを上手く剥がしたように見えたが…ファールの判定となってしまう。
開幕からここまで右サイドはあまり良い連携が出来ていなかったが、このシーンは佐藤田頭で上手く連携を取れた印象。
前節から田頭が継続して使われており、数をこなすことで更なる精度の向上に期待したいところか。
25分、永木亮太から坪井清志郎へ良い浮き球のスルーパスが送られるが、ここはトラップ際に大畑隆也が上手く身体を入れてブロック。
石井僚がボールは出さずに回収しマイボールに。
先ほども坪井には裏に抜け出されているが、ここは大畑がしっかりと修正して対応したと言えるだろう。
問題は相変わらず全くプレッシャーのかかっていない中盤のところ。
もちろん激しくプレスに行くようなところでは無いが、永木と児玉駿斗からは良いパスが送られるので多少は牽制しなければいけないだろう。
30分、徳島の攻撃が続き…群馬もシュートまでは打たせず低い位置で奪うも、繋がらず再び攻撃を受けるという展開が続く。
しかし最終的には低い位置で奪ったところからロングボールを選択し、平松宗が収めてファールをもらいマイボールに。
ここ3試合はこのようにロングボールも多用しており、更にはこの試合は平松がいつも以上にボールを収められていると言える。
ここで収まる…もしくはこのようにファールを貰ってマイボールにできるのは大きいだろう。
【30~45分】天笠危うし…
35分、大畑隆也から佐藤亮へのところが狙われボールを奪われてしまうが、天笠泰輝と大畑で挟み込んで奪い返すことに成功。
大畑から天笠に横パスを送ると、天笠が前線にボールを送ろうとするが…これがミスキックとなったか杉本太郎に当ててしまう。
こぼれ球を永木亮太が回収すると中野桂太にパスを付け、トラップから左足を振り抜くが石井僚が触ってコーナーへ。
中野は髙澤優也のファールを主張するが…これは認められず。
確かにややファール気味のチャージではあったが、髙澤の素早い危機察知からの寄せは素晴らしかった。
しかし天笠は「再び」となってしまい、ミスは仕方ないものの…同じミスを繰り返しているのは頂けないところだろう。
36分、永木亮太から裏に抜け出した杉本太郎に浮き球のパスが入る。
杉本がこれを頭で落とし中野桂太がシュートを放つも…これは杉本のところでオフサイドの判定。
長い距離を走って侵入してきた形にはなったが…誰も杉本を見ていない。
最初は風間宏希が見ていたが自分のゾーンを抜けた段階でマークを放棄(これ自体は問題無い)したが、そのマークを誰も引き継いでいないのが問題である。
スライドして本来のポジションからズレているから難しくなるのは事実だが…大畑隆也が前に出ておりその位置に入った天笠泰輝が付いていくのが正しいのではないだろうか?
オフサイドは完全に偶然の産物となっており、意図的にオフサイドを取ったものではなく…完全にラッキーと言えよう。
またオフサイドでプレーが止まっているとは言え、中野のシュートを石井僚がセーブしているのは好ポイント。
結果自体は全く変わらないが、こういったセーブでGKはノッていけるものである。
前半は左サイドで川上エドオジョン智慧が躍動。
43分にはエウシーニョの股を抜き、ファールを受けて倒されるもなぜかノーカード。
このシーンを代表に、攻撃時には完全に左サイドを制圧しことごとく1対1で勝てているのが印象的である。
【45~60分】膠着気味の試合展開に
後半は徳島のキックオフでスタート。
両チームともにハーフタイムでの選手交代は無くリスタートとなった。
51分、佐藤亮がボールを受けるとドリブルで内側に運んでから再び右サイドへ。
受けた田頭亮太はここは仕掛けず、中央後方の天笠泰輝にボールを送るとここからクロスを送り込む。
このクロスを髙澤優也が競り勝つも、ややボールが難しかったか…威力はそれほどではなくスアレスにセーブされてしまう。
このシーンでは使わなかったものの田頭の裏を大畑隆也がオーバーラップしかけており、こういった外側のCBの攻撃参加が増えてきたことも好材料と言えるだろう。
54分、左サイドを天笠泰輝と川上エドオジョン智慧で深く侵入。
エドから一度佐藤亮に下げ(流れの中で風間宏希とポジションが入れ替わった)、佐藤がクロスを送るが…これは永木亮太に引っ掛かってしまう。
しかしこぼれ球を中塩大貴がダイレクトで風間に送ると、ここからクロスを選択するも…スアレスが良い飛び出しを見せてセーブされてしまう。
中塩のパスが良く、更にはダイレクトだったことで風間に時間が作れたため…ここはミドルを狙っても良いのではないだろうか?
群馬はあまりにもミドルシュートが少なく、キーパーとしてもクロスがくると分かっているのなら対応は簡単。
またあの位置(浅い角度)からのクロスを競り勝ってゴールに送るのは難しため…右サイドを開いた田頭亮太を使って深い位置からクロスを送るという選択肢もあっただろう。
58分、両チームが同じタイミングで交代に動く。
徳島は杉本太郎に代えて島川俊郎、中野桂太に代えてチアゴ アウベス、児玉駿斗に代えてブラウン ノア 堅信を投入する。
群馬は佐藤亮に代えて永長高虎、平松宗に代えて佐川洸介を投入。
永長は珍しく長い時間を与えられることになるだけに、ここはしっかりとアピールしたいところ。
平松はほぼ触れていないが…この試合ではいつも以上に前線でボールが収まっていたほか、いつもと同様に最前線から良いプレスをかけていた。
【60~75分】幻のゴールと素晴らしいカウンター
永長高虎を投入したことからか、3-4-3だったフォーメーションは3-5-2へと変化。
佐川洸介と髙澤優也の2トップ気味でディフェンスをしており、永長は2列目の右側にいるように見える。
68分、風間宏希のパスがミスとなってしまいピンチを迎えるが、ここは自らしっかりと追い切り戻った川上エドオジョン智慧と共にボールを奪い返すことに成功。
中塩大貴に下げると、短めの浮き球で髙澤優也へ。
これを髙澤が頭で落とすと、天笠泰輝が再びハイボールを前線に送る。
佐川洸介が競り勝ち再び天笠に落とすと、ドリブルで持ち運んでから右サイドの永長高虎へ。
内側を田頭亮太がインナーラップするとそこを使い、田頭のクロスはファーサイドへ送られる。
これをエドが頭で合わせるも…目の前に競りに入ったエウシーニョでブラインドになったか、ミートせずに威力なくスアレスにキャッチされてしまう。
最後のところ…という感じではあるが、形としては見事なカウンターとなったと言える。
70分、橋本健人から坪井清志郎に斜めのパスが送られると、潰しにいった城和隼颯と挟みにいった大畑隆也を振り切る。
最初のクロスは城和がブロックするも、粘ったところから柿谷曜一朗にパスを送ると柿谷は横パスを選択。
島川俊郎が入り込み、見事なシュートフェイントで中塩大貴を外しペナルティエリア内に侵入するもスライドして位置が変わった大畑がスライディングでカット。
しかしこのボールを髙澤優也が処理できず、こぼれたところをチアゴ アウベスが左足を振り切りゴールネットを揺らす。
群馬の選手さえも誰もがゴールと思っていたが、なんとチアゴのシュートの際にブラウン ノア 堅信がGKの視界を遮る形でオフサイドポジションにいたためにオフサイドで取り消し。
リプレイを見ると確かにポジションは間違いなくオフサイドであるが、関与したかどうかは審判によっても判断が分かれそうなレベル。
群馬にとってはラッキーと言えるが、副審が素晴らしい仕事をしてくれたとも言える。
72分、再び両チームが同じタイミングで動き、群馬は天笠泰輝に代えて高橋勇利也を投入。
徳島は坪井清志郎に変えて高田颯也を投入する。
天笠は…スランプ気味か、失点こそしなかったもののここ数試合同じようなミスが続いているのが気になるところ。
玉城大志が良いプレーを見せており、勇利也が復帰ということでライバル争いが過熱するため再び奮起してほしい。
75分、左サイドの深い位置でフリーキックを与えてしまうと、橋本健人は低いボールをマイナスに蹴る。
ここにドフリーでチアゴ アウベスが立っており、ダイレクトで左足を振り抜くが石井僚がビッグセーブ!
こぼれ球を城和隼颯が頭でクリアするも、どちらも収めきれないまま徐々に群馬が陣地を回復。
最終的にはチアゴのところで高橋勇利也が奪い切るとカウンターを発動。
自らドリブルで少し運んでから左サイドに開いた佐川洸介を選択。
佐川がこれをダイレクトで一気に斜め前方に送り込むと、ここに川上エドオジョン智慧が抜け出す。
ワントラップでボールをやや上に上げると、落ち際をミドルシュート…と見せかけ切り替えそうとするが軸足の左足に当たってしまう。
しかし失わず冷静に右足で小さなタッチで左に持ち出すと、ここから左足を振り抜き見事なゴールを決めて見せる。
いやぁ…いつ以来だ?こんな見事なカウンター。
このシーンは後ほど振り返りたい。
【75~90分】決定力不足にも助けられ初白星
77分、高田颯也が左サイドでボールを受けると、カットインから永木亮太へパスを付ける。
永木から右サイド裏に抜け出したエウシーニョに素晴らしいスルーパスが送られるが、これはオフサイドの判定に。
このシーンもそうだが…2列目の重心が重過ぎて永木のところにプレッシャーがかからない。
また川上エドオジョン智慧はエウシーニョを捉えておらず、エドはこの辺りは大きな課題と言えるだろう。
特に中塩大貴から指示が出ていたようにも見えるだけに、ボールウォッチャーになっていたのは痛い。
しかしこれまたオフサイドでプレーは止まっているものの、石井僚がエウシーニョのシュートをセーブしているのもポイント。
石井はこの試合でかなり自信を付けたのではないだろうか?
80分、群馬が先に最後の交代を使い川上エドオジョン智慧に代えて山中惇希、髙澤優也に代えて和田昌士を投入する。
88分に徳島も最後の交代を使い、柿谷曜一朗に代えてカイケを投入する。
これにより明確に長身の選手を目掛けてパワープレー…ということになるだろう。
91分、ロングボールをカイケが頭で落とすとブラウン ノア 堅信が粘ってシュートに持ち込むも枠の外に。
ワンタッチでのボールの置き所は見事だったが、城和隼颯としてはここはシュートを打たせてはいけないところ。
ニアに高いシュート…というのは意外と入るパターンである。
92分には高田颯也からのクロスをチアゴ アウベスが競り勝つも枠の上に。
中塩大貴が被っているように見え…これは簡単に合わせられてはいけないシーンだろう。
95分、左サイドのスローインを橋本健人が後方に入れてリターンを受ける。
ここからゴール前にロングボールを送り込むと、城和隼颯も中塩大貴も触れずボールはチアゴ アウベスの足元に。
しかし振り抜いた左足は力んだか…ボールは浮いてしまい枠の上に外れてくれる形に。
DF陣はブラウン ノア 堅信のファールを主張するが、これは認められず。
確かに競り際にやや押しており、それによって落下点に入れず触れていない…のは事実ではあるが…。
しかしこのシーンもチアゴの決定力不足に救われた…と言って良いだろう。
こうして最後まで危ないシーンを数多く作り出されつつも、なんとか凌ぎ切り今季初勝利を掴むこととなった。
ピックアップポイント
75分の得点シーン
今回は久々の勝利ということもあり、ひねりも無くシンプルに得点シーンを振り返りたい。
まずは左サイドの高い位置、ゴールライン少し手前のペナルティエリアやや外でフリーキックを与えてしまう。
これを橋本健人が低く早いボールをマイナスに送り、チアゴ アウベスがダイレクトでシュートに持ち込むのだが…なんでここがドフリーなのか…。
群馬は11人全員がペナルティエリア内に入り、壁となった川上エドオジョン智慧と永長高虎以外はゴールエリア内にいた(佐川洸介がやや外ではあるが)となる。
そもそも根本的にこれが既にベタ引き過ぎると思うが…この辺りはセットプレーの考え方や事前の徳島に対するスカウティングなどもあるだろう。
対して徳島も(恐らく事前スカウティングにより)バイタルが空くということを知っており、橋本健人はゴール前ではなくマイナスのボールをPKスポットやや後方に送る。
この際、シュートを放ったチアゴは最外から弧を描くように動いて前向きでボールを受ける姿勢を作っている。
更にはチアゴ以外がゴール前に詰めることによって、群馬DF陣を引き連れてバイタルエリアを空けるという動きをしているのが特徴。(下図参照。チアゴがエウシーニョになっているが…誤記である)
群馬のセットプレー対応を研究したと思われる、非常に素晴らしい用意されたプレーである。
ボールが出た後に慌てて風間宏希が飛び込むが、ほぼノープレッシャーでシュートを打たれたと言って良いだろう。
この段階で攻守の駆け引きとしては群馬が負けており…失点しなかったのはチアゴのシュートコースがやや甘く正面になったことと石井僚がビッグセーブを見せたためである。
マンツーマンではなくゾーンで守っているのだから、立ち位置的には風間か佐川洸介…もしくは両方があれほど下がらずにあのスペースを埋めている必要があった。
この辺りはセットプレーだけでなく、サイドを深く抉られた際の対応も同様となっているため修正していく必要があるだろう。
悪い例として名前を出して申し訳ないのだが…過去の群馬では同じようにボランチに入っていた松下裕樹が後ろに重くなりDFラインに吸収された際に失点することが多かった。(特に2015年の復帰以降)
選手達としてみれば失点したくないから重心が下がり、ゴール前を固める形に移っていくわけだが…結果としてその前のバイタルエリアを使われて失点というパターンが生まれてしまう。
さてこのようにセットプレーの対応は悪かったわけだが、石井のビッグセーブもあり失点を防ぐことに成功。
こぼれ球は城和隼颯が頭でクリアしようとするが、後ろからのボールということもあり上に上がったに留まる。
これを森昂大が頭で前方に送るが、戻った城和が今度は大きく跳ね返す。
このボールは石尾崚雅が競り勝ち前方に送るが、これまた城和隼颯が跳ね返してボールは地面に付かないまま徐々に群馬が前に押し戻していく。
そしてこのボールを下がりながらチアゴ アウベスがトラップしようとするが、永長高虎が競り合い足を出したこともあり完全にコントロールできず。
また高虎がチアゴのユニフォームを引っ張ったこともあってか、イーブン…もしくはややチアゴ寄りだったボールを高橋勇利也が奪い取る。
厳密に言えば高虎のプレーはファールであり、群馬としては判定が味方した部分もあると言える。
しかし勇利也の寄せは素晴らしく、ややチアゴ寄りと言えるボールを寄せの速さと足の出し方で奪い取ってみせた。
そこからカウンターを発動し選択肢は右の川上エドオジョン智慧、左の佐川洸介と2ヶ所あった。
しかし恐らく勇利也が左利きということ、更にはすぐ右側を髙澤優也が駆け上がったことでコースを消してしまったことから左を選択。
佐川も縦に流して髙澤を走らせる選択肢と、逆サイド(中央)に折り返してエドを走らせる2つの選択肢があった。
しかし髙澤には高田颯也が対応しに動いており、そのためにファーが空いたのをしっかりと見てエドを選択。
リプレイを見ればわかるが、佐川はしっかりとエドの動き(もちろん髙澤、高田の動きも目に入っているだろう)を確認してそこにパスを送っている。
やみくもに前方に蹴りだしたのが偶然通った…わけではない。
正直言って佐川がこれほどまでに器用なタイプだとは思っておらず、このプレーだけでなく佐川には良い意味で驚かされている。
こうしてエドのスピードも殺さない抜群のボールが佐川から送られるわけだが、ここからのエドの動きも素晴らしかった。
落下点を予測しそこに入りつつ、一瞬ボールから目を切りGKの位置を確認。
位置によっては直接ループ気味に狙うことも考えたか…は不明だが、GKの位置を判断してトラップする選択を取る。
このトラップはわざと浮かせたのだと思うのだが、やや浮いたトラップにより落ち際を右足で叩くシュートフェイントで切り返し左足…というのが本来の狙い。
しかし切り返しが深くなり過ぎてボールは左足に当たってしまい、足元に入り込んでしまう。
時間がかかってしまう形になったものの、焦らずにしっかりとコントロールして切り返し左足でシュートを放ってゴール…となる。
ちなみに時間がかかってしまった割にエドに対するプレッシャーが甘かった…と言うか森昂大と永木亮太が戻ってきたにもかかわらず通り過ぎたのは田頭亮太のオーバーラップが大きい。
エドが時間がかかったことで石尾崚雅がエドの前に入ることができたため、仕掛けられずに右サイドの田頭を使う…という選択肢があった。
田頭を見ていた森は当然それに対応するべくスペースに走ったわけだが、永木も恐らく田頭から髙澤優也へのクロスをニアでカットするべく走り抜けてしまった…と思われる。
田頭を使った際のプレーイメージはこんな感じだったかと。
永木は下図のようにグラウンダー気味のボールに滑り込んでカット…という意図かと思われる。
(浮き球であれば高田颯也に対応を任せる形となる)
しかしエドはそこを使わず、田頭がデコイとなったことで自身の前に空いたスペースを活かして左足を振り抜くことに。
これが効き足ではなかったものの、見事なシュートとなり…またタッチが浅いと言うか、半テンポ早いタイミングで降り抜いたことでスアレスも反応できなかった。
エドが見事でありエドを誉めるべきで間違いないのだが…徳島の対応としては島川俊郎がやや諦めたように見えるのが命取りとなったか?
高田颯也は髙澤優也へのパスコースを潰す必要があるため、あれ以上は何もできない。
しかし島川はあそこまで戻ったにも関わらず最後は少し速度を落とし諦めたようにも…。
最後まで全力で入れば石尾と2人で挟めたんじゃないかと思ったりもするが…無理だろうか?
何にせよ見事なトラップから切り返しで躓いたものの…その後しっかりとリカバリーしてゴールを叩き込んだエドが見事の一言。
2番手は非常に悩ましいが…個人的には佐川の素晴らしいフィードとしたい。
3番手に田頭の素晴らしいオーバーラップ、4番手に勇利也の見事なボール奪取からのカウンター。
5番手に石井僚のセーブとし、6番手となってしまうが髙澤がしっかりと前線に走り左に開いて高田を絡ませなかったこととしたい。
ボールを触っていない選手も、このプレーに関わった選手が全て良い仕事をした素晴らしいカウンターだった。
MOM
この試合のMOMは川上エドオジョン智慧としたい。
値千金の決勝ゴールで今シーズン初勝利をもたらしてくれたと言える。
それ以外にも古巣相手ということもあってか気合いが入っており、攻撃面では左サイドを制圧したと言って良いだろう。
しかしながら守備面ではマークを見失うシーンがいくつかあり、この辺りは今後の彼の大きな課題と言える。
技術が高い選手で、もちろん持ち味は攻撃面なのだが…守備面が改善すればかなり良い選手に成長するだろう。
続いては田頭亮太の名前を挙げたい。
可変システムが原因か、途中出場ならではの難しさか…以前は可もなく不可も無くという印象だったが、この試合は非常に良かった。
佐藤亮との連携も向上しており、攻守にわたって豊富な運動量が光ったのが印象的。
得点やアシストといった目に見えやすい形での何かがあったわけではないが、90分を通してハードワークし攻守でいるべきところにいた影のMVP的な存在となった。
また田頭が右WBとして計算できることにより、チームの課題であった左サイドにエドを回せるのも大きいだろう。
最後に石井僚と高橋勇利也の名前も挙げたい。
石井は2試合続けて出場し、ややチアゴのシュートのコースが甘かったとは言えビッグセーブを見せ、結果的にそれが得点に繋がった。
それ以外にも安定したプレーを見せ、足元の技術とキック精度でチームに大きく貢献している。
繰り返しになるが、この2試合で大きな自信を付けられたのではないだろうか?
勇利也は大怪我からの復帰ということもあってか、やや重さを感じる印象があったが…得点シーンのボール奪取は見事の一言。
低調なボランチで起用するのか、代えのいない中塩大貴の控えと考えるのか…今後の起用法にも注目したい。
本人としては望む形ではないだろうがベンチに置くのであれば…彼がどちらもできることでベンチの枠を1つ攻撃の選手に充てられるのも大きいだろう。
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